人生において、生命保険はマイホームの次に高い買い物といわれています。長い期間にわたって保険料を払い続けていくことになるからですが、それだけに契約する際は慎重に対処し、疑問や不安があれば解消した上で臨むのが本来あるべき姿です。
しかし実際は、その場の勢いで契約したものの、後になって「大丈夫かな?」と不安を覚えることも少なくありません。どうしても不安な場合は、いっそキャンセルし、考え直しましょう。
今回は
- 生命保険のクーリングオフが可能な期間・手続き
- クーリングオフができない場合の対処法
について解説します。
目次
生命保険のクーリングオフとは
本来、クーリングオフとは「頭を冷やす」という意味です。転じて
を指します。
クーリングオフができる期間
生命保険の場合、クーリングオフができるのは、「クーリング・オフに関する書面を受け取った日」または「申込日」のいずれか遅い方から、その日を含めて8日以内です。
保険業法
第309条(保険契約の申込みの撤回等)保険会社等若しくは外国保険会社等に対し保険契約の申込みをした者又は保険契約者(以下この条において「申込者等」という。)は、次に掲げる場合を除き、書面によりその保険契約の申込みの撤回又は解除(以下この条において「申込みの撤回等」という。)を行うことができる。
一
申込者等が、内閣府令で定めるところにより、保険契約の申込みの撤回等に関する事項を記載した書面を交付された場合において、その交付をされた日と申込みをした日とのいずれか遅い日から起算して8日を経過したとき。
なお、法律では「8日以内」と定められていますが、あくまで契約者を守るための規定であるため、これより長い期間を保険会社が独自に設定する(例:15日以内、30日以内など)こともあります。
「クーリング・オフに関する書面を受け取った日」と「申込日」が同じ場合
例えば「クーリング・オフに関する書面を受け取った日」と「申込日」がいずれも2021年1月10日だった場合、2021年1月17日までクーリングオフが可能です。
「クーリング・オフに関する書面を受け取った日」と「申込日」が異なる場合
例えば「クーリング・オフに関する書面を受け取った日」が2021年1月10日、「申込日」が2021年1月13日だった場合、クーリングオフができるのは2021年1月20日までです。
クーリングオフが適用されないケースに注意
本来、生命保険はクーリングオフが可能である商品ですが、以下に掲げるケースの場合は、クーリングオフの対象とはなりません。理由としては
- 契約の内容について熟慮する猶予が十分に与えられていた
- 自分から契約することを望んで行動した
- 別の契約のために生命保険に加入しなくてはいけない
- 個人ではなく、会社(法人)の事業が前提となった契約である
ことが考えられます。
クーリングオフができない具体例
- 申し込みをした日、またはクーリングオフに関する書面を受け取った日のいずれか遅い方の日から8日を超えていた
- インターネット・郵送などの通信販売で申し込みをした
- 生命保険会社・保険代理店(保険ショップ)などに出向いて申し込みをした
- 自分で指定した場所で申し込みをした
- 保険期間が1年以内だった
- 生命保険会社が指定した医師の診査が完了していた
- 事業のために申し込んだ契約、法人名で申し込んだ契約だった
- 住宅ローンの団体信用生命保険など担保のための保険として加入した
実際は、個々の保険会社や保険商品ごとに、クーリングオフができる条件が緩和されていることは十分にあり得ます。
生命保険のクーリングオフの手続き
生命保険の申し込みを撤回したい場合、契約成立前であれば保険会社に申し入れることでキャンセルが可能です。しかし、契約成立後はクーリングオフの手続きを行うことになります。
書面で行うのが基本
クーリングオフの手続きは、保険会社に書面を送付して行います。相手に届いた事実自体を確認できるようにしたい場合は、内容証明郵便を使うと効果的です。
参照:内容証明 – 日本郵便
ただし、内容証明郵便は様式が厳格に決まっているため、時間がない場合は一般書留でいいでしょう。
参照:書留 – 日本郵便
先に触れた
という条件を満たすことが先決です。
書面の記入例
なお、クーリングオフの書面については、決まった様式はありません。以下のように「いつ、誰が契約したのか」がわかれば十分です。ただし、申込書に押印していた場合は、同じ印鑑を使って押印しましょう。
私は契約の申込撤回を行います。
契約者 マネク 花子
領収書番号 12345678
住所 東京都豊島区北大塚●―●―●
氏名 マネク 太郎
生命保険のキャンセル・クーリングオフができない場合の対処法
万が一、契約のキャンセルやクーリングオフができない場合、どうすればいいのでしょうか?
不要なのが明らかなら即解約する
簡単に言うと
のが答えです。生命保険の場合、契約している限りは毎月保険料を払っていかなくてはいけません。そのため「別に自分には生命保険はいらない」と確信した場合は、すぐに解約してしまった方が、経済的なダメージは少ないでしょう。
解約返戻金がある場合は確認しよう
保険料を年払い、月払いにしていた場合はあまり関係ありませんが、人によっては全期前納払いや一時払いにすることがあるかもしれません。
支払方法 | 説明 |
---|---|
月払い | 毎月支払う |
半年払い | 6ヶ月分ずつ、年に2回支払う |
年払い | 年に1回支払う |
全期前納払い | 全保険期間の保険料を生命保険会社に一括で預ける方式。預けたお金は少しずつ保険料に充当されていく |
一時払い | 保険契約時に、全期間分の保険料を一度に支払う方式 |
これら2つのように、将来の保険料までまとめて支払ってしまってから解約する場合は、解約返戻金が発生します。
- 解約返戻金はいくらになるのか
- 解約返戻金はいつごろ振り込まれるのか
については、必ず確認しておきましょう。
保障が妥当であれば後日見直した上で解約もあり
冷静になって契約した生命保険を見直した結果、保障内容はそう悪くないと思えた場合は、しばらく様子を見るのも1つの手段です。
ただし、一度でも生命保険を契約したということは「なんらかの形で、自分に万が一のことが起こった時に備えておきたい」と思っていた可能性が高いでしょう。
契約に至るまでのトラブルがあれば相談を
一度は契約したものの、クーリングオフや契約の取り消しを考えるということは「その時の雰囲気に押されてついつい契約してしまった」「契約をしないと帰さない、といわれた」など、契約に至るまでになんらかのトラブルがあったとも考えられます。
もし、契約に至るまでトラブルがあった場合は、まずは保険会社のコールセンターに連絡をし、事情を話しましょう。社内調査の結果、あまりに問題があると判断された場合は、社内において何らかの処分が下されるはずです。
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