知らないとムダになる!先進医療・先進医療特約について正しく理解しよう

自分や家族ががんなどの重い病気にかかった場合、何としてでも元気になってもらいたいと思うのは至極当然のことです。そして「治る可能性があるのであれば、試せる治療法はすべて試したい」と思うのも、無理はないでしょう。

このような気持ちが背景にあるのかはわかりませんが、医療保険やがん保険を契約する人は一定数いる上に、契約する際に先進医療特約を付帯する人も決して珍しくありません。しかし、先進医療が一体どんな治療法を指すのかまでは、正しく理解している人はかなり少ないはずです。

実は、このあたりを正しく知っておかないと、せっかく付帯した先進医療特約が役に立たない羽目にもなりかねません。

そこで今回は

  • 先進医療とは何か
  • 先進医療特約による給付金が下りる条件

の2つについて解説しましょう。

先進医療とは?

公的健康保険がきかないけど効果は高い治療法

法律(健康保険法等の一部を改正する法律(平成18年法律第83号))では、先進医療は次のように定義づけられています。

厚生労働大臣が定める高度の医療技術を用いた療養その他の療養であって、保険給付の対象とすべきものであるか否かについて、適正な医療の効率的な提供を図る観点から評価を行うことが必要な療養

出典:先進医療の概要について

これだと難しいので

治療効果が高く、身体に優しくて、その上早い回復が見込めるが、まだ公的医療保険の給付対象にはなっていない治療法で、将来的に公的医療保険の給付対象とすべきかどうか検討中のもの

と考えましょう。もっと簡単にすると「公的健康保険がきかないけど効果は高い治療法」と言ったところです。

費用は全額自己負担

日本の場合、基本的に全員が公的医療保険に加入するため、医療機関で病気・ケガの治療を受ける場合は、実際にかかった治療費の一部(3割が基本。病気の種類・年齢などの条件次第ではそれ以下の場合も)のみを自分で負担する仕組みです。

ただしこれはあくまで「公的医療保険の対象となる治療を受けた場合」のみの話です。先進医療はいわば「現在、公的医療保険の対象にするかどうか検討中」の治療法です。

そのため、先進医療と認められた治療を受けた場合、治療を受けるための費用(技術料)は全額自己負担となります。

保険診療と併用可能

なお、本来は1つの病気・ケガについて、公的医療保険の対象とならない治療(保険外診療)と対象となる治療(保険内診療)を同時に受けた場合(混合診療)、実際にかかった治療費はすべて自己負担となります。

しかし、1つの病気・ケガについて、先進医療に分類される治療と公的医療保険の対象となる治療を同時に受けた場合は、このルールは適用されません。公的医療保険の対象となる治療については、通常通り一部のみを自己負担する形になります。

高額療養費制度も併用可能

また、先進医療に分類される治療と公的医療保険の対象となる治療を同時に受ける場合、公的医療保険の対象となる治療に関する費用については、高額療養費制度を利用することで、自己負担分を抑えることも可能です。

なお、高額療養費制度については、こちらの記事で詳しく解説しています。

病気やケガをしたときに活用できる公的制度・年金6選

医師が必要と認めた場合のみ受けられる

なお、先進医療に分類される治療は「治療効果が高く、身体に優しくて、その上早い回復が見込める」ものではあるものの、すべての人が受けられるわけではありません。医師が「この人は先進医療に分類される治療を受ければ、早く回復する可能性がある」と認めた場合にのみ受けられます。

自分では「先進医療に分類される治療が受けられれば、自分はもっと早く回復するかもしれない」と思っていたとしても、医師が「まずは公的医療保険の範囲内の治療法を一通り試してから」と考えていた場合は、必要と認めてくれない可能性も高いです。この辺りは、医師と話し合いをし、方針をすり合わせておきましょう。

先進医療特約による給付金が下りる条件は?

「治療を受けた時点」で先進医療と認められているか

次に、先進医療特約による給付金が下りる条件について考えてみましょう。1つ目の条件は

「治療を受けた時点」で先進医療と認められているか

です。例えば、自分が受けた治療法が、従来は先進医療として扱われていたものの、想定したほどの効果が見込めないとして、先進医療から外されてしまった場合、先進医療特約による給付金は下りません。

参照:既存の先進医療に関する検討結果について

選定療養であれば公的医療保険と組み合わせることが可能

なお、仮に自分が受けた治療法が先進医療から外され、新たに選定療養に分類されることになった場合は、先進医療の場合と同じように、公的医療保険と併用することが可能です。この場合、公的医療保険による治療を受けた場合の費用に、選定療養に分類される治療法を使ったことによる上乗せ分がかかると考えましょう。

参照:選定療養に導入すべき事例等に関する提案・意見募集の結果への対応について(追加資料)

いずれにしても、自分が受ける治療法が公的医療保険の対象とならないものである場合は

  • それは先進医療、選定療養、自由診療のいずれに分類されるのか
  • 費用は総額でどのくらいかかるのか

については、必ず確認するようにしてください。

厚生労働省が指定する医療機関で治療を受けたか

どのような治療法が先進医療として認められているのかについては、厚生労働省のホームページで確認できます。

参照:先進医療の各技術の概要|厚生労働省

しかし、先進医療として認められている治療法を使ったとしても、状況次第では先進医療特約による給付金が下りない恐れがあるので注意してください。

指定外の医療機関で治療を受けると全額自己負担になる

ポイントになるのは「どこで治療を受けるか」です。実は、先進医療に分類される治療法については、厚生労働省が所定の基準を満たすとして指定した医療機関で受けるのが基本となっています。

もちろん、指定されていない医療機関でも、治療に必要な設備・薬剤・スタッフが揃っているなら治療自体を受けることは(理論上は)可能ですが、この場合は自由診療となるため、たとえ公的医療保険の対象となる治療法を併用したとしても、かかった費用は全額自己負担になります。

例えば、先進医療に分類される脳腫瘍の治療法の1つに「抗悪性腫瘍剤治療における薬剤耐性遺伝子検査」がありますが、以下のリスト以外の医療機関でこの治療法を受けた場合は、自由診療として扱われるので注意してください。

  • 香川大学医学部附属病院
  • 宮崎大学医学部附属病院
  • 宮城県立がんセンター
  • 名古屋大学医学部附属病院
  • 大分大学医学部附属病院
  • 神戸大学医学部附属病院
  • 福井大学医学部附属病院
  • 千葉県がんセンター
  • 慶應義塾大学病院
  • 東京大学医学部附属病院
  • 琉球大学病院
  • 熊本大学病院
  • 佐賀大学医学部附属病院
  • 医療法人豊田会 刈谷豊田総合病院
  • 九州大学病院
  • 弘前大学医学部附属病院

医師と相談し転院・通院も視野に入れること

自分の病気・ケガの状態が思わしくなく、公的医療保険の対象となる治療法を一通り試しても回復しそうにない場合は、先進医療や自由診療に分類される治療法も含めて検討する必要があるでしょう。しかし、先進医療に分類される治療法は「どこの病院で治療を受けるか」が非常に重要になります。

  • 入院している場合は転院するのか
  • 一時退院をし、通院しながら治療を受けるのか
  • 仮に効果が出なかった場合、自由診療も含めて可能性を探るのか

など、自分や家族の希望は遠慮せずに伝えるようにしてください。

結局、先進医療特約はつけるべき?

月数百円でお守りを買うつもりならアリ

最後に、先進医療特約はつけるべきかどうかについても触れておきましょう。多くの医療保険やがん保険には、先進医療特約を付帯できますが、付帯したことで上がる保険料は月数百円程度です。決して高い金額ではないので、お守りを買うつもりで付帯しておくのも、1つの選択肢でしょう。

がん治療費用保険という選択肢もある

しかし、仮に先進医療特約が付帯していたとしても、タイミングや治療を受ける場所次第では、あまり役に立たないことも十分に考えられます。「使えるかわからないものよりも、ちゃんと使えるものがいい」という考えがあるなら、医療保険に先進医療特約を付帯するのではなく、別にがん治療費用保険を契約することも検討しましょう。

がん治療費用保険とは、名前の通り「がんの治療にかかった費用を補償してくれる保険」ですが、医療保険・がん保険の先進医療特約とは違い、治療法が先進医療や自由診療に分類されるものであっても、かかった費用の補償が受けられます。

参照:がん保険のセコム損保|メディコム

「費用にとらわれず、試せる治療法はすべて試したい」というスタンスの人に向いているでしょう。
FP 荒井 美亜

FP 荒井 美亜あらい みあ

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大学院まで行って公認会計士を目指していたものの、紆余曲折を経て今は「日本一、お金のことを楽しくわかりやすく説明できるライター兼ファイナンシャルプランナー」目指して活動中です。日本FP協会のイベントのお手伝いもしています。保有資格)日本FP協会認定AFP、FP技能検定2級、税理士会計科目合格、日商簿記検定1級、全経簿記能力検定上級、貸金業務取扱主任者試験合格

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