会社員として働くことは、ある程度身分が安定しているという大きなメリットがあります。しかし、組織の一員である以上、常に自分が思った通りに仕事ができるわけではなく、不本意ながらも会社の意向に従わなくてはいけないこともしばしばあるはずです。
その点に限界を感じ「どうせなら、自分が仕事に対して思い描いている理想を実現したい」という思いで、会社を辞めてフリーランスになる人もいます。これ自体は悪いことではありませんが、お金の面で不利なのは確かです。
そこで、今、会社員であるものの、将来的にフリーランスになることを考えている人が、会社を辞める前に済ませておくべきタスクについて解説しましょう。
毎月コンスタントに稼げるスキルを身につける
会社員のうちから副業をしておく
会社員を辞めてフリーランスになろうとする人が最もやってはいけないことは「自分の技術が会社を辞めても通用する客観的な証拠がないまま、退職願を会社に出してしまうこと」です。自分が持っているスキルに対して、自分では「これで十分に食べていけるかも」と思っていたとしても、客観的に見たら食べていけるほどの収入が得られる質ではないということは十分に考えられます。
そのため、自分のスキルが売りものになるかどうかを判断するには、会社員のうちから副業として、フリーランスになった後に手掛けるつもりの仕事を細々と始めてみると良いでしょう。
1円も収入がない、という月を作らないのが大事
また、フリーランスになってしばらくのうちは、それだけで生計を立てていける収入は得られません。しかし、最近はクラウドソーシングなど、細切れの時間で仕事をし、報酬が受け取れるサービスが充実しています。
なお、文章が苦手でないなら、自分がフリーランスになったあと手掛ける仕事に関連する知識のWebライティングもできるようになっておくと、収入を得られる幅がぐっと広がります。パソコンとインターネット環境があれば誰でもできるので、試してみましょう。
手取り収入の1年分を貯める
生活防衛費とは
家計における大切な考え方の1つに、生活防衛費があります。
会社員の場合、一般的な相場として手取り収入の半年分を生活防衛費として貯めておけば良いといわれています。しかし、フリーランスになる場合は、会社員時代の手取り収入の1年分を生活防衛費として貯めてから、会社の退職に向けた具体的な動きを開始しましょう。
会社員とは違って福利厚生はないに等しい
フリーランスが会社員より生活防衛費を多めに用意すべき、というのには、れっきとした理由があります。一言でまとめると「フリーランスは、会社員とは違って福利厚生はないに等しい」ためです。
例えば、会社員は、ケガや病気になった場合、仕事が原因で起こったものであれば、労災保険給付を受けられます。また、仕事が原因で起こったケガ・病気でなくても、傷病手当金として、給料の約3分の2が最長で1年半受け取れるのです。
もちろん、フリーランスであっても、病気やケガをしたときに活用できる公的制度はあります。元気なうちから確認しておき、いざというときには忘れずに手続きできるようにしておきましょう。
あえて開業届をすぐに出さない
起業が前提の場合失業手当はもらえない
会社を辞め、就職が決まらない場合、所定の条件に当てはまるなら失業手当(失業保険の基本手当)を受取ることができます。
しかし、ハローワークは、失業を「就職しようとする積極的な意思があり、いつでも就職できる能力があるにもかかわらず、職業に就くことができない」と定義しています。そのため、あくまで「仕事が決まるまでの間の生活保障」という意味合いが強い手当です。
起業が前提であっても再就職手当がもらえることも
しかし、失業手当が受け取れない代わりに、再就職手当を受け取れる可能性があります。以下の8つの条件を満たすことが必要です。
1.就職日の前日までの失業の認定を受けた後の基本手当の支給残日数が、所定給付日数の3分の1以上あること。
2.1年を超えて勤務することが確実であると認められること
3.待期満了後の就職であること
4.離職理由による給付制限を受けた場合は、待期満了後1か月間については、ハローワークまたは許可・届け出のある職業紹介事業者の紹介により就職したものであること
5.離職前の事業主に再び雇用されたものでないこと(資本・資金・人事・取引等の状況からみて、離職前の事業主と密接な関係にある事業主も含みます。)
6.就職日前3年以内の就職について、再就職手当または常用就職支度手当の支給を受けていないこと
7.受給資格決定(求職申し込み)前から採用が内定していた事業主に雇用されたものでないこと
8.原則、雇用保険の被保険者資格を取得する要件を満たす条件での雇用であること
つまり、会社を辞めてフリーランスになる場合は
- 以前在籍していた会社から仕事を請け負う前提ではない
- 直近3年間の間に再就職手当を受取っていない
- 待機期間(会社を退職した日を含めて1週間)終了後から1カ月を経過してから開業届を出す
ことで、再就職手当を受け取れる可能性が出てきます。なお、具体的にどのくらいの金額が再就職手当として受け取れるかは人によって異なるので、ハローワークで確認するといいでしょう。
基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の2以上の場合 | 基本手当日額 × 所定給付日数の残日数 × 70% |
基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上の場合 | 基本手当日額 × 所定給付日数の残日数 × 60% |
例えば、退職したのが2021年3月23日だった場合は、待機期間は2021年3月30日までになります。少し余裕を見て、2021年5月1日を開業日とし、この日以降に開業届を最寄りの税務署および都道府県税事務所に提出しましょう。
固定費の削減に取り組む
スマホは格安SIMか格安プランに乗り換える
フリーランスになりたての時から、会社員時代と同じくらいの収入が得られる人は極めてまれです。節約にも努めましょう。節約効果の高さを目指すなら、固定費の削減に取り組むのが効果的です。例えば、スマホは格安SIMに切り替えるか、大手キャリアの格安プランに乗り換えるなど「基本料金を下げる」のを前提にしてください。
使っていないサブスクは解約する
また、1つ1つの月額料金はそれほど高くないため、ついつい契約してしまいがちなのがサブスクリプションサービス(サブスク、月額制サービス)です。
保険の見直しをする
節約効果の高さ、という点では、保険の見直しもおすすめです。
まずは、自分や家族が加入している保険の保険証券・契約内容をチェックし、足したほうがいい保障となくてもいい保障をより分けましょう。その上で、健康状態に問題がない家族については、別の保険に切り替えることも検討してみてください。毎月払う金額の掛金の安さという意味では、共済に切り替えるのもいいでしょう。
ただし、持病があり、定期的に通院している家族がいる場合、その家族については保険の切り替えは見送りましょう。今、加入している保険を解約し、別の保険に乗り換えようとしても、審査に通らないケースが多く、無保険の状態になりかねないためです。
必要がないなら車を手放す
「車がないと生活できない」「一家に一台、じゃなくて1人に一台」というような地域に住んでいるなら話は別ですが、そうでないなら、車を手放すのも選択肢の1つです。
車がなければ、駐車場代やガソリン代、自動車税や車検代などの費用が削減できます。
クレジットカードやカードローンの申し込みをしておく
フリーランスの社会的信用は低い
会社員であれば「金遣いが荒く、カードローンの延滞・滞納は常習犯」「実は友人にクレジットカードを貸したのが原因で強制解約になったことがある」など、よほどの事情がない限りは、クレジットカードやカードローンの審査に全く通らないことは考えにくいでしょう。
しかし、フリーランスになりたての頃は、クレジットカードやカードローンの審査には非常に通りにくくなっています。
クレジットカード会社やカードローンを提供する会社(消費者金融、銀行など)は、審査にあたり「安定継続した収入があり、延滞・滞納をせず返済してもらえるか」をきわめて重視します。安定継続した収入があるとは言えない駆け出しのフリーランスは、これだけでもかなり不利です。
また、消費者金融が提供するカードローンの場合は、貸金業法の規制が及ぶため、年収の3分の1以上の貸し付けはできない決まり(総量規制)が設けられています。銀行が提供するカードローンの場合、貸金業法ではなく銀行法の規制に基づいて運用されていますが、扱いはほぼ同じです。
使わなくてもいざというときのために持っておくこと
もちろん、会社に在籍しているときに新規でクレジットカードやカードローンに申し込んで審査に通り、その後会社を辞めたとしても、それだけでクレジットカードやカードローンを強制解約されることは、基本的にはありません。収入が激減した場合、利用限度額の切り下げが行われる可能性はありますが、延滞・滞納を繰り返すなど、明らかに問題がある使い方をしなければ大丈夫です。
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