学生から社会人になると、生活が一変します。自分である程度は自由に動けていた学生時代とは違い、社会の一員として、責任を果たしていかないといけません。そして、生活が一変するのをきっかけに、保険への加入を検討する人もいるでしょう。筆者は、新社会人が保険に入るなら、医療保険と個人賠償責任保険だけで構わないと思っています。その理由と、具体的な保険商品の選び方について解説しましょう。
目次
新社会人が医療保険と個人賠償責任保険に入るべき理由
入院、療養中は雑費がかかるから
そもそも、日本の場合は、高額療養費制度が設けられています。つまり、公的医療保険で賄える医療費については、上限額が定められているため、天井知らずにかかるということは基本的にありません。しかし
- 入院中の差額ベッド代
- テレビカードや書籍、ネット配信サービスやルーターなど、退屈しのぎグッズ
- 入院中に使うパジャマ、洗面用具など
については、公的医療保険が使えるはずもないので自己負担です。
サラリーマン、OLなど会社勤めをして給料をもらっている人(給与所得者)であれば、最大1年6カ月まで月給の3分の2が傷病手当金として受け取れます。しかし、入院、療養中は何かとお金がかさみがちである上に、仕事に復帰できるかどうかもわからない以上、お金を確保できる手段として医療保険を利用して損はないでしょう。
人に迷惑を掛けたら弁償しなくてはいけないから
個人賠償責任保険が必要になる理由は、医療保険のそれとは全くことなります。学生から社会人になると、行動範囲が一気に広がるはずです。その中で、思いもかけず、人のものを壊してしまったり、何らかのトラブルに巻き込まれてしまったりすることもあるでしょう。もちろん、明らかに自分に落ち度がある場合はともかく、全く悪気がない場合であっても、弁償する責任は生じます。
例えば
- 自転車で外回りをしているときに歩行者と衝突し、大ケガをさせてしまった
- 接待ゴルフに行った時に、カートに乗っていたら人をはねてしまった
など、行動範囲が広がるゆえのトラブルにも対応できます。
学生のうちであれば、自分で弁償できなかったとしても、保護者である家族が対応に当たってくれるでしょう。しかし、社会人になったのであれば、基本的には自分で対応すべきです。
個人賠償責任保険は「人に迷惑をかけた場合の損害賠償費用を払うための保険」として位置づけられています。そのため、あらかじめ加入しておけば、万が一、自分の稼ぎだけでは払えないほどの損害賠償を負うことになったとしても、金銭的に支払いができない、という事態は避けられるでしょう。
生命保険は特殊な事情がない限りは不要
一方、新社会人にとってあまり必要がないのは生命保険です。生命保険は、簡単に言うと「自分に万が一のことがあった場合に、遺族に死亡保険金が支払われる」商品ですが、もともとは「遺族の生活費の保障をする」という意味が含まれています。
「うちは母1人子1人だから、何かあったときに葬式代くらいは確保しておきたい」など、個別の事情を考えたとしても、数千万単位の保障が必要になることはあまりないでしょう。
死亡保障は外す
医療保険の中には、死亡特約などの名前で、死亡保障を特約として付帯できる商品が存在します。つまり、自分に万が一のことがあった場合に、まとまったお金を受取れることになりますが、新社会人のうちは外してかまいません。
入院給付金の日額は1万円にする
普段は物音や周囲の環境をあまり気にせずに眠れている人であっても、いざ入院となると、周囲が気になってしまい、大きなストレスになるはずです。できることなら、個室か少人数の病室に入れた方が楽かもしれませんが、そのためには差額ベッド代がかかります。
もし、医療保険に入ることで、差額ベッド代をまかないたいと思うなら、入院給付金の日額は1万円にしましょう。厚生労働省の調査によれば、全国の病院の差額ベッド代の平均は以下の通りでした。
部屋の種類 | 差額ベッド代(円) |
---|---|
1人部屋 | 7,812 |
2人部屋 | 3,130 |
3人部屋 | 2,878 |
4人部屋 | 2,508 |
平均 | 6,129 |
実際にいくらかかるのかは、病院の所在地や病室数、部屋の内装や設備によっても変わるので一概には言えませんが、日額1万円受け取れるようであれば、個室に入る場合の差額ベッド代の足しには十分になる、と考えておきましょう。
掛け捨て型を選ぶ
医療保険を「払った保険料がどれだけ戻ってくるか」という基準で分類した場合、以下の2つに分かれます。
掛け捨て型 病気、ケガなどの保険金・給付金の支払事由に該当した場合のみ、保険金・給付金の受給という形で払った保険料が戻ってくる。
貯蓄型 病気、ケガなどの保険金・給付金の支払事由に該当した場合はもちろん、解約返戻金・満期保険金という形で、払った保険料が戻ってくる。
このうち、新社会人の時から入る前提であれば、掛け捨て型の医療保険で十分です。掛け捨て型は医療保険における支払事由に該当したときだけ保険金・給付金が受け取れるという商品であるため、毎月の保険料は安くなっています。
新社会人向けの個人賠償責任保険の選び方
一方、新社会人向けの個人賠償責任保険の選び方は、非常にシンプルです。
できるだけ費用を掛けずに加入する方法を選ぶ
一言でまとめると「できるだけ費用をかけずに加入する方法を選ぶ」になります。費用をかけずに個人賠償責任保険に入る方法として
- アパート、マンションの火災保険に特約として付加する
- クレジットカード会社を通じて加入する
- LINEを通じて加入する
の3つを紹介しましょう。
アパート、マンションの火災保険に特約として付加する
社会人になることを機に、一人暮らしを始める人もいるかもしれません。その際、部屋を借りるときに必ず火災保険の話が出てくるはずです。ほとんどの火災保険には、個人賠償責任特約を付加することができるので、他人にケガをさせたり、物を壊したりしたときに弁償する際の費用が賄えます。
クレジットカード会社を通じて加入する
クレジットカード会社の中には、クレジットカード会員向けのサービスの一環として、外部の保険会社と提携し、安い保険料で加入できる会員限定の保険を販売していることがあります。
例えば、エポスカードの場合、損害保険大手の三井住友海上と提携し「エポラク傷害保険」という形で、個人賠償責任保険を含む損害保険のパッケージプランを販売しています。
具体的な保険料は、クレジットカード会社や補償内容によって異なりますが、本人のみ保障が受けられる形であれば、月数百円程度で済む場合が多いです。
LINEを通じて加入する
まだ個人賠償責任保険に加入していない人はもちろん、既に加入している人の上乗せのために利用できるのが、無料メッセージアプリ「LINE」を運営するLINE株式会社のグループ企業・LINE Financial株式会社が提供する「かぞく全員安心保険」です。
出典:いつでも、簡単に、100円から入れる保険|LINEほけん公式サイト
毎月140円の保険料で、本人はもちろん、配偶者や同居の親族(血族は6親等、姻族は3親等)も最大1億円までの補償が受けられます。なお、大手損害保険会社である損害保険ジャパンが引受会社となっていますので、事故対応もスムーズです。
筆者はもともと、借りている部屋の火災保険に個人賠償責任特約を付帯させていましたが、最大補償額が3,000万円だったので、上乗せのために利用しました。
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