コロナ禍で、公共交通機関での移動を避けたいという理由から中古車の販売台数が伸びているという報道がされています。
出典:中古車販売、1.3%増 コロナ下、堅調に推移―20年度:時事ドットコム
車を買い、運転するからには、法律上義務付けられている自賠責保険のほかに、民間の損害保険会社が販売する自動車保険への加入を検討する人も多くなっているでしょう。そして、近年、ほとんどの自動車保険には、顧客サービスの一環としてロードサービスが付帯しています。
一方、日本では古くから一般社団法人日本自動車連盟(JAF)が会員向けにロードサービスを提供してきました。実は筆者は最近、ごく親しい知人から「保険会社のロードサービスとJAFのロードサービスって、何が違うのかわからない」という質問を受けたので、徹底比較した結果をこちらの記事としてご報告します。
目次
自動車保険のロードサービスとは
自動車保険加入者向けのサービス
まず、自動車保険に付帯しているロードサービスは、加入者向けのサービスの一環として提供されているものです。損害保険会社によって、具体的にどのようなトラブルに、どこまで対応できるかはまちまちですが、今回はイーデザイン損保を例にして説明しましょう。
レッカーサービス | 事故・故障などの原因で車が動かなくなった場合、現場から修理工場までのけん引を行う(指定工場の場合は距離制限なし、それ以外の工場を希望するなら60キロまで)。 |
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引き上げ・引き降ろしサービス | 落輪したときや縁石に乗り上げてしまったとき、車の引き上げ・引き降ろし作業を行う。 |
応急対応サービス | バッテリーのジャンピング、鍵開け、パンク時のスペアタイヤ交換、各種オイル・冷却水の補充、各種バルブ・ヒューズの取り換え、ボルトの増し締め、サイドブレーキの固着解除などの応急処置を行う。 |
燃料切れ時ガソリン配達サービス | 道路上などでガス欠になったときに、ガソリンまたは軽油10リットルを無料で届ける(保険期間中1回まで)。 |
故障相談サービス | 車の故障・トラブルについて、専任スタッフが電話上でアドバイスをする。 |
情報提供サービス | 帰宅手段案内、修理入庫先案内、24時間営業ガソリンスタンド案内、緊急宿泊先案内、レンタカー会社案内など、知らない土地で事故に遭った場合に役立つ情報を電話で案内する。 |
出典:自動車保険のロードサービス | 自動車保険のイーデザイン損保
メリット
利用しても等級に影響はしない
自動車保険のロードサービスのメリットについて触れましょう。1つ目のメリットとして「利用しても等級に影響はしない」ことが挙げられます。
ノンフリート等級制度とは
自動車保険の場合、初回契約時は6等級から始まり、無事故で過ごす年数が長ければ長いほど、等級が高くなり、保険料の割引率も大きくなるという仕組みが用いられています(ノンフリート等級制度)。
一方、事故を起こしたり、車に傷をつけられたりなど、何らかのトラブルに巻き込まれた際に、自動車保険を使って修理対応をすると、等級が下がり、保険料の割引率も下がってしまいます。そのため、軽微なトラブルであれば、あえて自動車保険を使わず、自費で修理する人もいるくらいです。
無料で利用でき、回数制限もない
また、自動車保険のロードサービスは顧客サービスの一環として提供されているため、無料で利用できる上に、回数制限もありません。ただし
- クレーン作業などの特殊作業・銃作業を行った場合の費用
- 48時間を超える車両保管を行った場合の料金
- 保険期間中2回目以降のガソリン配達
など、有償対応となるケースもあります。このあたりの扱いは、損害保険会社によって細かい違いがあるので、自分が加入している自動車保険の場合はどうなっているか、事前に確認しておきましょう。
レッカーサービスのけん引距離が長い
車が故障してしまった場合、けん引車(レッカー車)と呼ばれる特殊な車を使い、修理工場まで運ぶことになります(レッカーサービス)。自動車保険に付帯しているロードサービスの場合、損害保険会社が指定した工場までは無料でけん引してくれるケースも珍しくありません。
また、自分で希望の工場を指定した場合でも「60キロまでなら無料」など、比較的長距離の場合でも無料で対応してくれることも多いです。やはり、このあたりの扱いも損害保険会社によってまちまちなので、実際に確認するのをおすすめします。
デメリット
高度な修理・作業に対応できない
一方、デメリットもあります。まず、自動車保険に付帯しているロードサービスはあくまで顧客サービスの一環として無料で提供するものです。そのため「事故・トラブルが起きた場合の応急処置」や「加入者・家族の安全、宿泊・帰宅手段の確保」に重きを置いた内容になっています。
- タイヤチェーンの着脱
- パンクの応急処理
- 異音・異臭などのトラブル点検
など、事故・トラブルが起きた現場での高度な修理・作業には対応していないことがほとんどです。
自然災害が原因の事故・故障は対象外
また、自動車保険に付帯しているロードサービスでは、大雨や台風などの自然災害が原因で車が故障したり、前方不注意になり事故を起こした場合のサポートを行わない(行っても一部のみ)と規約に設けているケースが散見されます。このあたりの扱いは、損害保険会社によってまちまちですが、対応してもらえても「あくまで応急処置程度」と考えたほうが良いでしょう。
自分の車を運転しているときにしか使えない
ある意味、最も注意が必要なデメリットがこれです。自動車保険に付帯しているロードサービスは「自動車保険の対象となる車両に対するサービス」であることが前提となっています。
JAFのロードサービスとは
JAF(日本自動車連盟)加入者向けのサービス
JAFとは、正式名称を「一般社団法人日本自動車連盟」と言う、オーナードライバーの権益を保護する目的で設立された一般社団法人です。これから紹介するロードサービス以外にも
- 交通安全・地球環境保全問題の啓発活動
- 外国運転免許証の翻訳などの国際業務
など、様々な活動を行っています。しかし、一般的によく知られているのは、ロードサービス業務です。なお、詳しくは後述しますが、JAFは会員から入会金・年会費を徴収し、運営資金の一部に充てています。
メリット
高度な修理に対応できる
JAFのロードサービスのメリットとして「事故・トラブルが起きた現場で、比較的高度な修理・対応を行ってくれる」ことが挙げられます。例えば、自動車保険のロードサービスでは対応していない(もしくは回数制限がある)
- キーとじ込み
- 異音・異臭が起きた場合の点検
- バッテリー上がりの場合の応急始動作業
などの作業にも、無料で対応してくれます。
自然災害が原因の事故・故障も対象になる
また、自動車保険のロードサービスでは対応していない場合もある自然災害が原因の事故・故障にも、JAFのロードサービスは対応しています。
自分以外の車を運転しているときも利用できる
JAFは会員制度を取っているため、ロードサービスも「会員へのサービスの一環」として行っています。
デメリット
入会金・年会費が必要
一方、デメリットとしては「入会金・年会費が必要である」ことでしょう。例えば、個人会員の場合
- 入会金:2,000円(入会時のみ)
- 年会費:4,000円(毎年)
が経費としてかかります。これを高いとみるかどうかは、その人の自動車の運転頻度や考え方によって変わるでしょう。なお、JAFのロードサービス自体は、JAF会員でなくても利用することが可能ですが、会員である場合と比べると、かなり高い料金を請求されるので注意してください。
レッカーサービスのけん引距離は短い
また、事故・故障が起きた現場から、修理工場まで車をレッカー移動する際のけん引距離は、15キロまでと決まっています。ただし、加入している自動車保険がJAFと提携している損害保険会社のものだった場合は
- 最初に自動車保険のコールセンターに連絡する
- オペレーターにJAF会員である旨を伝え、同意のもとでJAFに取り次ぎを行う
ことで、無料サービスの適用範囲を拡大してもらうことが可能です。なお、2021年5月現在、以下の損害保険会社と提携しています。
- あいおいニッセイ同和損害保険(株)
- AIG損害保険(株)
- 共栄火災海上保険(株)
- JA共済(全国共済農業協同組合連合会)
- セゾン自動車火災保険(株)
- 全国自動車共済協同組合連合会
- 全日本火災共済協同組合連合会
- 損害保険ジャパン(株)
- 大同火災海上保険(株)
- 東京海上日動火災保険(株)
- 日新火災海上保険(株)
- 三井住友海上火災保険(株)
- 三井ダイレクト損害保険(株)
JAFにも入るべき人の条件は?
自分の車以外も運転する予定がある人
最後に、JAFにも入っておいた方が良い人の条件について考えておきましょう。真っ先に挙げられるのは「自分の車以外も運転する予定がある人」です。自動車保険に付帯しているロードサービスは、あくまで「自分が加入している自動車保険の対象となっている車に対してのもの」であるため、それ以外の車には使えません。
- 友人・知人と連れ立って旅行に行くことが多い
- 実家に帰省したときに、家族の車を使う予定がある
- 営業など、外回りが多い仕事をしているため社用車を使う
など「自分の車以外も運転する予定がある」なら、リスクヘッジの一環としてJAFに入っておくのを検討しましょう。
積雪量が多い地域に住んでいる、行くことが多い人
- スキー、スノーボードが趣味である
- 北陸、東北、北海道など積雪量が多い地域に住んでいる、もしくは行くことが多い
など、雪が降る中を運転する予定がある人も、JAFへの加入を検討したほうがよさそうです。
自動車保険のロードサービスでは、積雪が原因で起きたトラブルに関しては降雪が原因でお車が走行不能となった場合に、走行可能な場所への引き出しを行います。ただし、雪対応タイヤまたはチェーンを装着しており、お客さまご自身で一定の除雪作業を行ったにもかかわらずトラブルが解決しない場合に限ります。
出典:自動車保険のロードサービス | 自動車保険のイーデザイン損保
など、ごく限られた対応しかしてもらえないのがほとんどでしょう。
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