子どもに医療保険は不要。4つの理由を徹底解説

筆者は必ずしも「医療保険は不要」とは思いません。それなりに貯蓄があり、病気やケガで働けなくなっても生活費や治療費の不安がないならまだしも、十分な貯蓄がない状態では医療保険はやはり頼りになるでしょう。

しかし、そんな筆者でも「さすがに入る必要はない」と思うのが「子どもの医療保険」です。今回は、筆者がそう考える4つの理由を解説します。

理由1.そもそも入院する確率が低いから

15歳未満の子どもが入院する確率は?

そもそも、15歳未満の子どもが入院する確率は非常に低いです。厚生労働省が発表している患者調査によれば、0歳 ~ 14歳までの人口10万人に対する入院患者数は以下のとおりでした。

年齢階層 総数(人) 人口10万人に対する比率
0歳 1167 1.17%
1 ~ 4歳 169 0.17%
5 ~ 9歳 86 0.09%
10 ~ 14歳 94 0.09%

出典:厚生労働省 平成29年(2017)患者調査の概況

0歳が多いのは、出産の際に異常が見つかりそのまま入院というケースもあることが背景として考えられます。それでも、人口10万人に対する比率はわずか1.17%に過ぎません。年齢が上がればさらに低くなり、5歳 ~ 14歳ではわずか0.09%にとどまります。数字で見ると、入院する確率が極めて低いことが実感できるはずです。

理由2.入院しても短期間で済むことがほとんどだから

平均は1週間程度

同じく、厚生労働省の患者調査によれば、15歳未満の患者の平均在院日数(入院日数)は7.4日とのことでした。

出典:厚生労働省 平成29年(2017)患者調査の概況

実際には病気・ケガの種類や容態によって異なるので、必ず短くなるとは言い切れませんが、たいていの場合は1週間程度で退院できると考えていいでしょう。

理由3.中学校卒業までは医療費の自己負担分がゼロに近いから

埼玉県さいたま市の場合

ほとんどの地方自治体では、子育て支援の一環として所定の年齢(中学校卒業までのケースが多い)までの医療費の自己負担分について補助を行っています。つまり、病気やケガで医療機関で治療を受けたとしても、自分で支払いをしなくて良い(してもごくわずか)ということです。

筆者が住んでいる埼玉県さいたま市の場合は

  • さいたま市在住の0歳から中学校卒業前までの子どもである
  • さいたま市内の医療機関で、公的医療保険の範囲内の治療を受けた

の2つの条件を満たす場合は、自己負担分が無料となる仕組みとなっています。なお、さいたま市以外の医療機関で治療を受けた場合も、後日払い戻しの申請を行うことで自己負担分が返還されるので、事実上無料です。

出典:さいたま市/子育て支援医療費助成制度について

ただし

  • 文書料
  • 薬の容器代
  • 予防接種代
  • 健康診断料
  • 差額ベッド代
  • 保険診療外の歯科治療費
  • 入院時の食事療養標準負担額
  • 保険外併用療養費の初診料

など、公的医療保険の範囲外の診療・処置を受けた場合の費用は自己負担となるため気を付けましょう。

理由4.重い病気にかかっても助成制度が使えるから

小児慢性特定疾病医療費助成制度

子どもは入院する確率が低く、日数も少ないと書きましたが、長期の入院を余儀なくされる重い病気(例:小児がん、心臓疾患など)と闘うことになる可能性はゼロではありません。

もし、重い病気で長期の入院・治療が必要になった場合は、小児慢性特定疾病医療費助成制度を利用しましょう。簡単にまとめると

厚生労働省が定める一定の病気で入院・治療を受ける場合に、治療費の補助が受けられる制度

です。この制度を利用した場合、世帯年収に応じ、以下のように自己負担上限額が決まります。

出典:医療費助成に係る自己負担上限額 – 小児慢性特定疾病情報センター
https://www.shouman.jp/assist/expenses

また、本来入院中の食費は全額自己負担ですが、この制度を利用すれば、自己負担額を半分に減らすことが可能です。

なお、対象となる病気(疾病)のリストは、小児慢性特定疾病情報センターのWebサイトにて掲載されています。

https://www.shouman.jp/assist/outline

準備するものと手続きの流れ

実際に、小児慢性特定疾病医療費助成制度を使う場合には、所定の手続きを行わないといけません。大まかな流れは以下の通りです。

  1. 小児慢性特定疾病指定医を受診し、医療意見書(診断書)の交付を受ける。
  2. 医療意見書と必要書類を合わせて、都道府県(または指定都市・中核市)の窓口に申請する。
  3. 都道府県(または指定都市・中核市)が行う審査で認定された場合、保護者に医療受給者証が交付される。
  4. 指定医療機関を受診する際、医療受給者証を医療機関に提示し、治療を受ける。
  • また、手続きにあたっては以下の書類が必要になるため、もれなくそろえましょう。小児慢性特定疾病医療費支給認定申請書
  • 小児慢性特定疾病医療意見書(診断書)
  • 住民票
  • 市町村民税(非)課税証明書などの課税状況を確認できる書類
  • 健康保険証の写し
  • 医療意見書の研究利用についての同意書

ここで挙げた以外にも、別途書類の提出を求められる場合もあるため、適宜相談しながら進めてください。

特別児童扶養手当

病気やケガが原因で、子どもが所定の障害状態に陥った場合、特別児童扶養手当の支給が受けられないか確認しましょう。これは

20歳未満で精神又は身体に障害を有する児童を家庭で監護、養育している父母等に支給される手当

で、障害の程度により52,500円(1級)もしくは34,970円(2級)が毎月支給されます(令和2年度の場合)。

https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/jidou/huyou.html

なお、実際に手続きをする場合は、住んでいる地域を管轄する市区町村役場を通じて申請する流れです。事前にWebサイトなどで

  • 手続きに必要なもの
  • 受付場所

などを確認しておくと良いでしょう。

https://www.city.saitama.jp/002/003/004/003/002/p001495.html

障害児福祉手当

病気やケガから回復が思わしくなく、常に在宅での介護が必要になることも十分に考えられます。その場合は、障害児福祉手当の対象とならないかも検討してください。支給月額は14,880円(令和2年4月より適用)です。

https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/jidou/hukushi.html

こちらも、先ほど紹介した特別児童扶養手当と同様、住んでいる地域を管轄する市区町村役場を通じて手続きを行います。

https://www.city.saitama.jp/002/003/004/003/002/p001494.html

自立支援医療費制度(育成医療)

心臓の病気で入院していたものの、ペースメーカーを埋め込み、日常生活を問題なく送れるようになった

など、一定の病気については手術・処置を行うことで、確実に効果が期待できるのも事実です。そのような治療を検討している場合は、自立支援医療費制度(育成医療)を使いましょう。

これは、簡単に言うと

条件に当てはまる一定の手術・処置を受けた場合、医療費の自己負担分が軽減される

制度のことです。

https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/jiritsu/ikusei.html

ただし、この制度を使う場合の注意点として

  • 特定の医療機関(指定医療機関)で治療を受けた場合にしか助成が受けられない
  • 実際に手術・処置を受ける場合に申請を行わなくてはいけない

の2点が挙げられます。

まずは、子どもが治療を受けようとする医療機関が、住んでいる地方自治体から指定医療機関として認定されているか確認しましょう。地方自治体のWebサイトで確認することも可能ですが、わからない場合は直接市区町村役場に電話・訪問するのも1つの手段です。

https://www.city.saitama.jp/002/003/004/003/004/p038623.html

どんな制度が使えるかはソーシャルワーカーに相談を

実際のところ、子どもは小児がんなどの重い病気にかかったとしても、医療費の助成制度が充実しているため、それらをフル活用すれば十分な治療を受けさせることは可能です。

しかし、これらの制度は自分から手続きをしないと利用できません。

まずは医療機関内に勤務しているソーシャルワーカーに相談し

  • どんな制度が使えるのか
  • 制度を使うために何を準備すればいいのか

を調べてもらいましょう。

医療機関や患者会にも相談を

また、小児がんや心臓病など、長期にわたる治療・経過観察が必要な病気で闘病している子どもがいる場合は、患者会や医療機関の無料相談窓口も利用しましょう。

http://www.ccaj-found.or.jp/

https://kanagawa-pho.jp/mailform/1591/mfp08/index.html

https://ganjoho.jp/child/

https://www.ncc.go.jp/jp/ncce/clinic/pediatric_oncology/070/20170831153441.html

今回取り上げた医療費に関する相談はもちろんのこと、子ども自身や家族の生活についても、親身に相談に乗ってくれるはずです。

FP 荒井 美亜

FP 荒井 美亜あらい みあ

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大学院まで行って公認会計士を目指していたものの、紆余曲折を経て今は「日本一、お金のことを楽しくわかりやすく説明できるライター兼ファイナンシャルプランナー」目指して活動中です。日本FP協会のイベントのお手伝いもしています。保有資格)日本FP協会認定AFP、FP技能検定2級、税理士会計科目合格、日商簿記検定1級、全経簿記能力検定上級、貸金業務取扱主任者試験合格

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