結婚や出産を機に、医療保険を含めた保険への新規加入、見直しを検討する人は多いです。その一方で「医療保険は不要。保険料の分、毎月貯金すれば問題ない」と考える人もいます。そこで今回は、両者の意見を検証したうえで「本当に医療保険に入ったほうがいい」のはどんな人なのか、考えてみましょう。
目次
「医療保険は必須」派の意見を検証
入院・療養中は生活費がかかる
病気やケガで入院・手術・自宅療養しているときであっても、自分自身や家族の生活費はかかります。そして、当然これらの生活費は、公的医療保険から給付を受けられるわけではありません。
例えば、入院した際の食事代や差額ベッド代は、全額自己負担です。数日~1週間程度の入院であれば、それほど金額は膨らみませんが、入院が長期にわたった場合は、かなりの出費になります。
公益財団法人生命保険文化センターがまとめたところによれば、入院時の自己負担費用の平均は、1日あたり23,300円になるとのことでした。
出典:1日あたりの医療費(自己負担額)はどれくらい?|公益財団法人 生命保険文化センター
もちろん、実際にどのぐらいの費用がかかるかは、その人の年齢、家族構成、病気やケガの種類や容態、差額ベッドの利用の有無などによっても異なります。
公的医療保険が使えない治療法も試したい
ケガや病気の種類によっては、公的医療保険が使えないものの、有効性が確認されている治療法を用いたほうが、早く回復に向かうこともあり得ます。このような治療法を試す場合、一部の例外を除いて費用は全額自己負担です。そうなると、ある程度まとまったお金が必要になるため、医療保険からの給付金を治療費に充てるという選択もできるでしょう。
精神的な安心を得たい
最近では共働き夫婦も珍しくなくなりましたが「夫が世帯主かつ一家の大黒柱である」という家庭はやはり多いはずです。そして、世帯主が入院してしまった場合、現状の備えと公的医療保険だけで生活ができるのか不安に思う人は確かにいます。
公的財団法人生命保険文化センターの調査によれば、世帯主が病気や交通事故などで2~3カ月入院した場合、現在の経済的備えだけでは不安と感じている人は、全体の63.5%にも上りました。
出典:生命保険文化センター 平成30年度「生命保険に関する全国実態調査」(平成30年12月発行)
そして、不安を感じている人にとっては「ケガや病気で入院・手術したら、給付金や保険金が下りる」という医療保険はやはり魅力的に映るはずです。
「医療保険は不要」派の意見を検証
そもそも貯金があれば問題ない
医療保険が必要と考える人の中には、「療養中の生活費が不安だから」という根拠を挙げる人もいます。しかし、十分貯金があるなら、そこから療養中の生活費を出しても構いません。このような事実があるため「貯金があれば、医療保険に入る必要はない」と考える人もいます。
公的医療保険や高額療養費制度がある
日本は「国民皆保険」といって、一部の例外を除いて、たとえ外国人であっても、何らかの公的医療保険に入ることが義務付けられています。そして、公的医療保険に入っていることによって、治療を受けた人は医療費の一部のみを負担すればよい仕組みになっているのです。
また、1カ月の自己負担分が一定の上限額を上回った場合は、その上回った部分については自己負担をしなくていいという制度(高額療養費制度)も存在します。これらの仕組みがあるため、諸外国に比べると比較的安価な金額で治療を受けることが可能です。
つまり、ケガや病気をしたとしても、公的医療保険が適用される範囲内で治療を受けるのであれば、自分で負担しなくてはいけない治療費はたかが知れています。
傷病手当金制度がある
民間会社員や公務員など、どこかに勤めて給料をもらっていて、勤務先の健康保険に入っている人(厚生年金、共済の加入者)であれば、傷病手当金制度も利用できます。
この制度があるため、ケガや病気をしたとしても、1年6カ月以内であれば、無収入になってしまうことは考えにくいでしょう。無収入になる可能性が低い以上、民間の医療保険に入る必要がないと考える人もいます。
掛捨型だと病気・ケガをしなければ保険料が無駄になる
一口に医療保険といっても「支払った保険料が戻ってくるか」を基準にすると、さらに細かく分けられます。
- 貯蓄型:解約返戻金、満期返戻金、祝い金などの名目で、病気やケガをしたとき以外にも、支払った保険料が戻ってくる
- 掛捨型:解約返戻金、満期返戻金、祝い金などは存在せず、病気やケガをしたときにしか、支払った保険料は戻ってこない
このうち、掛捨型については「病気・ケガをしなければ保険料が無駄になる」というネガティブなイメージを持つ人はいます。このような人は「保険料を払うくらいなら、その分貯金したい」と思っても不思議ではありません。
結局、医療保険は必要?不要?
どちらの立場の意見にも一理ありますが、筆者は「医療保険は必須。ただし、経済的に余裕がある場合や、公的医療保険の範囲内の治療で十分なら入らなくてもいい」と考えています。
もちろん
- 十分に貯金がある
- 会社員や公務員で、傷病手当金を受け取れる
- 子どもがいない、もしくは既に独立している
病気になっても、公的医療保険の範囲内での治療を受けらればいい
という人であれば、ある程度かかるお金は見えてくるので、無理に医療保険に入らなくても構いません。しかし、総額でいくらくらいあればいいのかわからない状態であれば「安心を買う」という意味で、医療保険に入った方がいいでしょう。
筆者の周囲にもがんなどの重い病気で長期療養を余儀なくされた人がいましたが、やはり「お金のこと」を不安要素として挙げていた人が多かったです。
医療保険に入ることで「何かあった時に一定の額が受け取れる」という安心感を買うことはできます。その「安心感を買う」ことに、どれだけお金を払う気になるかで。医療保険に入るかどうかを決めればいいはずです。
医療保険に入ったほうがいいのはこんな人
まだ十分な貯金がない
ここまでの内容を踏まえ、医療保険に入ったほうがいいのはどんな人かを考えてみましょう。まず、最初に検討するべきなのは「まだ十分な貯金がない人」です。極論すれば、たとえ病気やケガで働けなくなったとしても、貯金があれば治療しながら生活していけます。しかし、貯金がない状態で病気やケガをし、働けなくなったら、その間の生活費をどうやって確保するかが問題になるのです。
小学生以下の子どもがいる
小学生以下の子どもがいる家庭で、家事や育児を担っていた人が病気やケガで療養を余儀なくされた場合は「誰が家事や育児をするのか」を真剣に考えなくてはいけません。中学生以上になれば、たいていのことは自分でできるようになるため、そこまで深刻ではないでしょう。
もちろん、他の家族が手分けして回せれば問題ありませんが、どうしても誰も都合がつかない日だってあり得ます。また、療養中の家族の世話と同時並行で家族が生活していく以上、適度に力を抜かないと共倒れになる可能性は高いです。
このようなサービスを利用するための費用を賄うために、民間の医療保険があると役に立つでしょう。
試せる治療法は全部試したい
がんや生活習慣病、難病に指定されている病気にかかった場合、人によっては「試せる治療法は全部試したい」と思うかもしれません。公的医療保険が適用されない治療法であっても、有効性が確認されているものはたくさんあります。しかし、このような治療法を受ける場合は、費用は自己負担が原則です。
例外として、先進医療に指定されている治療法であれば、所定の医療機関で治療を受けた場合、同時に行った治療のうち、公的医療保険が適用されるものについては、自己負担分を抑えられます。
フリーランス、自営業である
会社員や公務員など「どこかに勤めて給料をもらっている人」であれば、業務外のケガや病気で療養を余儀なくされた場合でも、最長で1年6カ月間は、傷病手当金が給付されます。つまり「1年6カ月の間は無収入にならない」ということですが、自営業やフリーランスの場合は、このような制度の恩恵は受けられません。
そうなったときに困らないようにするためには、働けるうちに貯金に励むことですが、それだけでは賄えないことも十分に考えられます。安心を得るという意味でも、医療保険を上手に使うといいでしょう。
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