商売として人にお金を貸す = 貸金業を営む場合、各都道府県知事もしくは内閣総理大臣への登録が必要になります。つまり、登録をしないで貸金業を営むのは、そもそも違法ですが、実際は登録をすることなく、人にお金を貸している業者も存在します。
これらの業者は、無許可営業(闇営業)をしている金融業者という意味で「ヤミ(闇)金」と呼ばれていますが、暴力団・反社会勢力の資金獲得のための手段として使われることもあるため、絶対に関わってはいけません。
それでも、ヤミ金とは知らずにうっかり関わってしまうことはあるでしょう。その場合の対処法を解説します。
目次
ヤミ金からの借金は返済不要な理由
金利の設定が法律違反であるから
その理由の1つに、往々にして金利の設定が法律違反である以上、この設定に基づく契約にも問題があると解されるためです。
年20%を超えたらアウト
借入金の利息については、法律(利息制限法)により、元本に応じた上限金利が定められています。
元本の金額 | 上限金利 |
---|---|
10万円未満 | 年20% |
10万円 ~ 100万円未満 | 年18% |
100万円以上 | 年15% |
そして、これらの上限金利を超える金利での貸し付けがなされた場合、超過する部分は無効である上に、行政処分の対象となります。さらに、別の法律(出資法)では上限金利が20%と定められており、これを超える貸付が行われた場合は、刑事罰の対象となるのです。
最高裁判決では「元本も返済不要」となっているから
加えて、ヤミ金からお金を借りた場合の元本の扱いについても、最高裁が平成20(2008)年6月10日に判決を下しています。
不法原因給付とは
ヤミ金による違法な貸し付けは、立派な法律違反です。そのため、不法原因給付(社会の倫理・道徳に反する醜悪な行為による給付)に該当するため、ヤミ金業者から借主に対して返還請求をすることはできません。
元本返済不要でもやってはいけない2つの対応
ここまでの話をまとめると「ヤミ金から借りてしまっても、利息・元本ともに支払う必要はない」ということです。しかし、仮にそうだったとしても、以下の2つの対応は絶対にしてはいけません。
- 最初から踏み倒すつもりで借りる
- 自力でヤミ金業者と交渉する
最初から踏み倒すつもりで借りる
借金をする場合、ほとんどの人は必ず返済する前提でお金を借り、実際に返済しようと努力するでしょう。その結果、返済できなかったとしても、そのことを理由にして逮捕されることはあり得ません。
しかし、中には口で「絶対返すよ」と言っているものの、内心では踏み倒すつもりで借りている人もいるでしょう。
相手がたとえヤミ金だったとしても、「返さなくていいなら借りて踏み倒しちゃえ」などという、安易な気持ちで利用するのは、取返しのつかない結果になるので、絶対にやめましょう。
自力でヤミ金業者と交渉する
たとえ、交渉に自信があったとしても、自力でヤミ金業者と交渉するのはおすすめできません。ヤミ金業者もうっかり利用してしまった人がクレームを入れてくることくらいは織り込み済みで動いているはずです。交渉したところで、因縁をつけられたり、言い負かされたりして終わるのが関の山でしょう。
また、自分で事務所を探し出して出向いて交渉をしようとする人のもやめましょう。これは法律上の自力救済にあたるため、現在の法律では例外を除き禁止されているためです。逆に不法侵入として警察に通報される可能性もあります。
ヤミ金業者と関わってしまった場合の正しい対応
弁護士に相談する
警察に通報するのも大事ですが、証拠がないと動いてくれない場合も多いため、対応に手間取っている間に手遅れになることも考えられます。
弁護士に相談することによる効果
ヤミ金業者による被害を弁護士に相談することによる効果として
- 取立行為をやめさせられる
- 返済した金額を取り返せる
- 被害届の提出、刑事告発ができる
が考えられます。それぞれについて詳しく解説しましょう。
取立行為をやめさせられる
ヤミ金業者からお金を借りてしまった人が悩まされるのが、執拗な取り立てです。家や職場に押しかけてくるという古典的な手段はもちろん、最近はメールや電話での嫌がらせも問題になっています。
貸金業法では「弁護士が介入した場合には、それ以降の取立行為をしてはいけない」という旨が定められています。
貸金業法 第二十一条
貸金業を営む者又は貸金業を営む者の貸付けの契約に基づく債権の取立てについて貸金業を営む者その他の者から委託を受けた者は、貸付けの契約に基づく債権の取立てをするに当たつて、人を威迫し、又は次に掲げる言動その他の人の私生活若しくは業務の平穏を害するような言動をしてはならない。
(中略)
九 債務者等が、貸付けの契約に基づく債権に係る債務の処理を弁護士若しくは弁護士法人若しくは司法書士若しくは司法書士法人(以下この号において「弁護士等」という。)に委託し、又はその処理のため必要な裁判所における民事事件に関する手続をとり、弁護士等又は裁判所から書面によりその旨の通知があつた場合において、正当な理由がないのに、債務者等に対し、電話をかけ、電報を送達し、若しくはファクシミリ装置を用いて送信し、又は訪問する方法により、当該債務を弁済することを要求し、これに対し債務者等から直接要求しないよう求められたにもかかわらず、更にこれらの方法で当該債務を弁済することを要求すること。
実際は、ヤミ金業者からの取立てを受けている人が弁護士に依頼した場合、弁護士はまずヤミ金業者に弁護士が介入したことを知らせるための文書(受任通知)を送ります。この文書には
- 取立行為をやめること
- 既に支払われた弁済額を返還すること
などが記載されています。
なお、ヤミ金業者の住所がわからない場合は、弁護士が電話をかけて介入したことを伝え、取立行為をやめるよう要求するのが一般的な流れです。
返済した金額を取り返せる
実際のところ、弁護士が受任通知をヤミ金業者に送っただけで、ヤミ金業者が取立行為を止め、これまでの弁済額の返金に応じることは往々にしてあります。しかし、受任通知が届いたとしても、意に介さず取立行為を続け、弁済額の返金にも応じない業者もいるのです。
被害届の提出、刑事告発ができる
ヤミ金業者の被害にあった場合、警察に届ける人も多いはずです。しかし、警察は確固たる証拠がないと動かないことも多く、また、担当する警察署・警察官によっては、対応にばらつきがあるのも事実です。
そのため、弁護士に協力を依頼し、証拠集めや被害届の提出、告訴、告発などの手続きを適切に行うことを目指しましょう。
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