自分や配偶者の親の介護は、親が病気やケガ、事故で早世したなどの特別な事情がない限りは避けて通れない課題の1つです。もちろん、何もトラブルがなく看取れれば理想ですが、現実的にはそううまくはいかないことも多いでしょう。
中でも「兄弟姉妹で年老いた親の介護をすることになった」パターンは、当事者が複数人になるためトラブルになりがちです。介護が終わった時に「もうあいつの顔なんて二度と見たくない」と言い出すほど仲が険悪になるのも珍しくありません。
兄弟姉妹間の介護トラブルを避けるために注意すべきポイントについて考えてみましょう。
目次
兄弟姉妹間の介護トラブルの例
兄弟姉妹間の介護トラブルは千差万別ですが、割とよくあるトラブルを3つ紹介しましょう。
誰か1人に負担が集中してしまう
昔の日本では「長男の嫁(配偶者)が親の面倒を見るのが当然」という風潮がありました。これは、長男が親と同居することが多く、自然と介護が必要になった場合も、身近にいる長男とその配偶者が対応することになるという事情も背景にあります。
この風潮のせいか、いざ介護が始まったとしても、一緒に住んでいる、もしくは近所に住んでいる家族に負担が集中してしまうのは珍しくありません。
任されていない側の家族は「〇〇さんがやってくれているから大丈夫でしょ」と思っていても、任された側の家族は「全部とは言わないけど、少しは手伝ってほしい」と不満をため込んでしまい、ある日爆発してしまうのは十分考えられます。
手もお金も出さないが文句だけは多い
誰か一人、もしくは一家族に負担が集中したとしても、都合が合う日は手伝ってくれたり、経済的な援助を申し出たりしてくれるなら、まだ話はまとまりやすいでしょう。
しかし、実際は、手伝いや金銭的援助を申し出ることもなく「お母さんの体調が悪いのは〇〇さんのせいだ」とか「なんでこんなにお金がかかるの?」と文句ばかりいう人も存在します。
実際に介護にあたっている家族からすれば「手伝いもしないのに、お金も出さないのに、適当なことばかり言わないで!」とフラストレーションがたまってしまうはずです。
親の預貯金が足りないのに金銭援助を拒否する
本来、親の介護にかかるお金は、親の資産でまかなうのが理想です。しかし、実際には親の経済状態が芳しくないため、子どもが介護にかかる費用を分担しなくてはいけないことだってあり得ます。もちろん、この場合でも話し合いで負担する額を決め、その通りに進めていければ何ら問題はありません。
問題になるのは、兄弟姉妹の誰かが金銭援助を拒否したケースです。特に、兄弟姉妹間の経済力に格差がある場合、経済力がない側の兄弟姉妹が、ある側の兄弟姉妹に向かって「あなたの方がお金持ちなのだから、お母さんの介護費用くらい全部出してよね」と一方的に負担を押し付けてくることも考えられます。
もちろん、経済力に応じて、金銭援助の額を減らしたり、どこかで手伝いをしてもらったりと金銭面以外での貢献を求めて応じてくれればいいですが、それすらも拒否されてしまったらどうしようもありません。
兄弟姉妹間の介護トラブルが起こる3つの原因
そもそも、兄弟姉妹間の介護トラブルはなぜ起こるのでしょうか?原因を考えてみましょう。
介護にいくらお金がかかるかわからない
介護にいくらお金がかかるのかは、実際に介護をすることになってみないとわかりません。公益財団法人生命保険文化センターが行った調査によれば、介護費用の平均は、初期費用など一時的な費用が69万円、月額費用が7.8万円でした。
出典:介護にはどれくらいの年数・費用がかかる?|公益財団法人 生命保険文化センター
しかし、あくまでこれは平均値であるため、実際にはこれよりも多くかかることは十分に考えられます。
介護がいつ始まり、終わるのかわからない
突然始まってしまう上に、それがいつまで続くのかわからない、という状況は、誰にだってストレスになるはずです。
実際のところ、介護期間はどのくらいになるのでしょうか。生命保険文化センターの調査から、介護期間の平均についてのデータを紹介しましょう。
6カ月未満 | 6.40% |
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6カ月~1年未満 | 7.40% |
1~2年未満 | 12.60% |
2~3年未満 | 14.50% |
3~4年未満 | 14.50% |
4~10年未満 | 28.30% |
10年以上 | 14.50% |
不明 | 1.70% |
平均 | 54.5ヵ月 |
出典:介護にはどれくらいの年数・費用がかかる?|公益財団法人 生命保険文化センター
平均で54.5カ月(約4年7カ月)となっています。しかし「10年以上」という長期に渡って介護をすることになる人も全体の約14%もいるのです。
介護の大変さはやってみないとわからない
介護というと誰にでもできそう、というイメージがありますが、実態は全く違います。
加えて、介護がいつ終わるのか、正確なところは誰にもわからない以上、何年も手探りの状態で物事を進めていかないといけないことは十分に考えられます。これは、介護をしている側にとっては大変なストレスであると同時に、介護をしていない人に説明したところで、完全に理解してもらえるとは限りません。
兄弟姉妹間の介護トラブルを避けるために注意すべき4つのポイント
ここまでの内容を踏まえ、兄弟姉妹間の介護トラブルを避けるためには、どんなことに注意すべきなのかを考えてみましょう。
まずは親の意向を聞いておく
最初にやるべきことは、元気なうちに親の介護に対する意向を聞いておくことです。例えば
- どこで介護をしてもらいたいのか
- 延命治療はしたほうがいいのか
- 万が一のことになった場合、誰に連絡をしてほしいか
など、話し合いを進めると、見えてくるものがたくさんあるはずです。
親の経済状況を確認しておく
また、介護をするにはお金がかかります。親の老後の生活にかかわる費用である以上、本来は親自身の財産でまかなえるのが理想ですが、実際はそうもいかないことは十分にあり得ます。
そのため、まずは親の経済状況を確認した上で
- 親が望む介護はできそうか
- 金銭的に難しければ、兄弟姉妹で追加支出をするのか
など、方針を決める必要があります。
兄弟姉妹で親の介護に対する意向をすり合わせる
介護において最も優先されるべきなのは、介護を受ける側である親本人の意向ですが、介護にあたる側である兄弟姉妹の意向も全く無視することはできません。
例えば
- 在宅介護をするか、施設に入れるか
- 介護サービスはどの程度使うか
- 費用はどれだけ出せるか
- 自宅のリフォームが必要な場合、誰が中心になって進めるか
など、介護の進め方とお金の問題については、兄弟姉妹間でずれが生じないよう、意向をすり合わせておく必要があります。
役割分担を決め、情報を共有する
兄弟姉妹でも、大人になり独立して家庭を持っているなら、それぞれに事情があるでしょう。たとえば、親の介護への貢献度合い一つとっても
- 近隣に住んでいるので、手伝いには来られるが、金銭的な援助は難しい
- 出張や転勤が多いため手伝いはできないが、金銭的な援助はできる
- フルタイムでの介護はできないが、病院に連れていく際の車を出すことはできる
など、人それぞれであるはずです。
また、既に触れた通り、兄弟姉妹で協力して介護にあたる場合、最もやってはいけないのは「誰か一人に負担が集中してしまうこと」です。
現実的には、中心となって介護にあたる人(主介護者)が存在しますが、適宜情報共有を図り「今、何が足りていて、何が足りていないか」を考えながら、協力して介護を進めていきましょう。
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