原因は何であれ、借金の返済が難しくなった人がとってしまいがちな行動の1つに「夜逃げ」があります。簡単に言うと「夜中にこっそり逃げるように引っ越しを行うこと」です。
確かに、ストーカー・DVなどの犯罪被害者であれば、転居先を知られては身の危険が及ぶため、有効な手段かもしれません。
しかし、借金の解決手段としては全く役に立たないので注意しましょう。それどころか、かえって事態が悪化する可能性が高いので、借金で悩んでいたら夜逃げ以外の手段で解決するのが基本です。
そこで今回は
- 夜逃げで借金は解決しない理由
- 夜逃げの代わりに取るべき現実的な解決策
について解説しましょう。
目次
夜逃げで借金は解決しない理由
理由1.業者は住所がわからなくても訴訟を起こせる
クレジットカード会社や消費者金融、銀行など、貸金業法や銀行法など、関連する法律の規定に乗っ取り運営している会社からお金を借りる際には、必ず住所や電話番号を申告しなくてはいけません。
そして、仮にお金を借りて返せなくなった場合、お金を貸した業者(債権者)は
- 登録された電話番号に電話をかける
- 登録された住所宛に内容証明郵便を送る
- 登録された住所をもとに、担当者が実際に訪問する
などの方法で、コンタクトを取ろうとします。それでも返してもらえない場合は、裁判所に対して支払督促の申立てをしたり、訴訟を提起したりすることになるでしょう。
このような背景があるため
- 電話番号を変えてしまえば連絡がつかなくなる
- こっそり引っ越して住民票も移さなければ郵便物も届かないし、担当者の訪問もなくなる
と思い、夜逃げに走る人が出てくるのかもしれません。
確かに、電話をかけるには相手の電話番号が、内容証明郵便を送ったり、支払督促の申立てをしたりするには、相手の現住所をはっきりさせる必要があります。
しかし、裁判所へ訴訟を提起する=裁判を起こすとなると、全く事情が違うので注意しましょう。
つまり、債権者(ここでは消費者金融やクレジットカード会社、銀行など「お金を借りたところ」)が裁判所に公示送達の手続きをし、裁判所の掲示板に公示送達の呼出状が掲示されると、たとえ相手が夜逃げをしていたとしても、裁判を起こしたことになります。
理由2.夜逃げしている間も借金は増え続ける
夜逃げをしたからと言って、借金が帳消しになるわけではありません。後述する債務整理をするか、まとまったお金を確保して一括返済するかでもしない限り、遅延損害金が延々と発生し続けます。
夜逃げをする人の背景には「逃げてしまえば、お金を返さなくても良いはず」という油断があるはずです。
裁判に持ち込まれると時効の更新が起きる
なお、借金をした場合、5~10年経てば時効が成立します。
民法 第166条
1.債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。
二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。
しかし
- お金を貸した側(債権者)が裁判を起こした
- お金を借りた側(債務者)の財産が差し押さえられた
- 債務者が借金をしていることを認めた
など、一定の事由があった場合は借金の時効が更新されます。わかりやすくするため、例を用いましょう。
クレジットカード会社からキャッシングでお金を借りて、4年間返済せずに放置していた
↓
4年目に突入したところで、クレジットカード会社側が裁判を起こした
↓
本来なら後1年で時効が完成し、返済義務がなくなるはずだったが、それが全くの白紙に戻る
実際のところ、債権者となるクレジットカード会社、消費者金融、銀行などが時効が完成する直前までノーアクションでいることは考えにくいです。
借金の時効を更新させるべく、延滞・滞納が続いていたらいずれは裁判を起こすことになるので「時効が成立するまで夜逃げでつなぐ」ことはまず無理でしょう。
理由3.そのほかにも様々な弊害が生じる
仮に、借金をして延滞・滞納を続けた場合、債権者となっている会社(クレジットカード会社、消費者金融、銀行など)は、債券保全のために住民票や住民票の除票の写しを請求することができます。
そして、住民票の除票には転出先の住所が記載されるため、連絡がつかない場合は転出先の住所を元に、新たに住民票の写しを請求するという形で、何とかして連絡を取ろうとしてくるはずです。
そのため
- 就職が出来ない
- 各種証明書類の発行など公共のサービスが受けられない
- 国民健康保険の手続きが出来ない
- 選挙で投票ができない
- 運転免許証の更新ができない
など、生活の様々な場面で弊害が生じます。
賃貸物件に住んでいた場合も厄介
また、夜逃げをする前に住んでいた家が賃貸だった場合は
- 家具や家電製品などを残して逃げることになる
- 家賃を滞納していた場合、その回収も困難になる
ため、大家さんにとってもとんでもない迷惑が掛かります。
加えて、夜逃げをした事実を家族に隠していたとしても、大家さんが家族に連絡したことがきっかけで家族に発覚することも考えられるので、マイナスでしかありません。
夜逃げの代わりに取るべき現実的な解決策
債務整理が第一選択肢
結局のところ、夜逃げをしたとしても、何も良いことはありません。どうしても借金が返せなくて悩んでいるなら、債務整理で解決することをまずは考えるべきです。
なお、一口に債務整理といっても、手続きの流れや残せる財産の範囲、家族への影響などは異なります。ここでは、代表的な方法として、任意整理・自己破産・個人再生の3つを紹介しましょう。
個人再生 | 裁判所に申し立てをして、原則として負債の20%の金額(約100万円~300万円)を3年間~5年間で支払う再生計画案を立てて認可決定を受けることにより、残りの債務を免除してもらう |
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任意整理 | 弁護士・司法書士が依頼者の代理人となって和解交渉を行い、成立した和解の内容に従い、支払いをしていく。 |
自己破産 | 裁判所に申し立てをして、最終的に借金の全額を免除してもらう。 |
なお、債務整理については「MoneQ Guide」の別記事でも詳しく解説しています。
- どの方法を選ぶのが良いか
- どのタイミングで具体的に動き始めるべきか
- 手続きを頼む専門家の選び方
などについて、詳しく解説してあるので併せて読んでみてください。
報酬の分割払いに応じてくれる専門家がほとんど
「債務整理といっても、弁護士さんや司法書士さんに頼むお金なんてないし」としり込みする人もいるかもしれません。確かに、弁護士や司法書士に債務整理の手続きを依頼する場合は、それぞれの専門家が定めるところの報酬を支払わなくてはいけません。
しかし、債務整理を中心に手掛けている専門家であれば、依頼人に報酬を一括払いするだけの支払い能力がないことくらいはわかっているはずです。
また、自分だけで対応が難しい場合は「法テラス(日本司法支援センター)」の費用立て替え制度を利用するのも手段の1つです。ただし、この場合は一度無料法律相談を受けてから手続きを進めていくことになるため、最寄りの法テラスの事務所にまずは問い合わせてみましょう。
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