今後は高齢者に「部屋を貸さない」ではなく「サポートしながら貸す」時代へ。大家さんが選ぶべき孤独死保険とは?

総務省統計局がまとめたところによれば、2020年9月15日現在、高齢者(65歳以上)の人口は3617万人(人口全体の28.7%)に上るとのことです。

出典:総務省「統計トピックス No.126 統計からみた我が国の高齢者 -「敬老の日」にちなんで-」

つまり、大雑把にいってしまうと「3~4人に1人は65歳以上の人」ということになります。

日本はこれほどの高齢化社会に直面している以上、少子化対策に気を配るのと同じくらい、高齢者が快適に暮らせるかを考えていくのが大事になっていくでしょう。

そして、詳しくは後述しますが、高齢者を取り巻く問題の1つに「なかなか部屋が借りられない(賃貸住宅に入居できない)」ことが挙げられます。

今回は、この問題について深く掘り下げるとともに、大家さん(不動産オーナー)はどんな対策を取れば良いのかを「孤独死保険の選び方」という視点から考えてみましょう。

なぜ、大家さんは高齢者に部屋を貸したがらないのか?

本題に入る前に「なぜ、大家さんは高齢者に部屋を貸したがらないのか?」という疑問について考えてみましょう。

1.年齢とともに孤独死のリスクは上がる

筆者はこの記事を書くにあたって、自分なりに「高齢者が賃貸住宅に入れない理由」を考えたり、その分野に詳しい専門家の方に話を聞いたりしてみました。最初、筆者は

  • お金がないこと=家賃を継続的に支払えないこと
  • 他の入居者とトラブルを起こしがちなこと

が主な理由のかと考えていましたが、実際は

  • 生活保護や年金の受給を受けているため、コンスタントに毎月お金が入ってくる立場であることから、比較的家賃は継続的に支払ってもらえることが多い
  • ルールをよく守り、大人しく行儀よく生活してくれる人が多いので、他の入居者とのトラブルは起こしにくい(そのため、むしろ歓迎する大家さんも多い)

とのことです。しかし、やはり年を取ればとるほど孤独死(=自分の部屋で誰にも看取られず亡くなってしまうこと)のリスクは上がります。つまり

  • 身体機能が衰えていくため、ささいなことがきっかけで急激に状態が悪化し、死に至る可能性がある
  • 注意力も低下していくため、普段通りに生活していても、転倒して頭を打ったりするなど不慮の事故を起こしがちになる

などが理由として考えられるためです。

また、男性と女性とでは、孤独死が起こりがちな年齢についても多少差があります。こちらは、東京都監察医務院による孤独死をした一人暮らしの人の年齢と数をまとめたグラフです。

出典:東京都監察医務院で取り扱った自宅住居で亡くなった単身世帯の者の統計(令和元年) 東京都福祉保健局

このグラフから

  • 男性は年齢とともに孤独死の数が増えていくが、60代後半から70代前半でピークを迎え、その後は減っていく
  • 女性は年齢とともに孤独死の数が増えてゆく

という傾向が読み取れるでしょう。

男女に傾向に差が見られる明確な要因は、筆者にはわかりませんが、1つの可能性として考えられるのは「男女の平均寿命・健康寿命の差」かもしれません。ちなみに、厚生労働省が発表した「令和元年簡易生命表の概況」によれば、男性の平均寿命は81.41年、女性の平均寿命は87.45年とのことです。

出典;令和元年簡易生命表の概況|厚生労働省

また、国内の大手シンクタンクがこの数字をもとに、健康寿命(健康上の問題で日常生活に不自由しない状態で暮らせる年齢)を算定したところ、男性が72.68年、女性が75.38年になったとのことでした。

出典:2019年健康寿命はさらに延伸~制限がある期間はやや短縮するも、加齢や健康上の問題があっても、制限なく日常生活を送ることができる社会を構築することが重要 |ニッセイ基礎研究所

つまり、男性は女性に比べて、平均寿命も健康寿命も短く、ある程度の年齢になったら、介護施設に入所したり、医療機関に入院したりして、そのまま亡くなることも多い(つまり、孤独死とは言えない状態で亡くなる)と考えられます。そのため、カーブの描き方も多少異なるのです。

2.家族に修理代は請求できるとは限らない

一人暮らしをしていた家族が万が一のことになってしまった=孤独死をした場合、発見が遅れた場合は遺体が傷んでしまい、部屋の床や壁紙などをすべて取り換えなくてはいけない事態に発展することも十分に考えられます。また、そこまで深刻な事態でなかったとしても、大がかりな部屋の清掃・消毒は必要になるのが現実です。

このような場合、工事・清掃・消毒にかかった費用を亡くなった人の家族に請求できるかどうかが問題になります。そもそも、法律ではどのように規定されているのかをまずは確認しましょう。

民法
第六百六条 賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。ただし、賃借人の責めに帰すべき事由によってその修繕が必要となったときは、この限りでない。

簡単にまとめると

  • 本来、貸していた部屋の修繕=リフォームや清掃や消毒にかかる費用を負担する義務は、大家さん(賃貸人)にある
  • しかし「部屋の中で自ら命を絶ってしまった」など、借りていた人(賃借人)に落ち度がある(故意・重過失がある)場合は、費用を負担しなくてはいけないこともある

ということです。

病気による孤独死の場合は「実はずっと前から重い病気にかかっていて、医師から入院するよう何度も言われていたのに、本人が嫌がっていた結果、部屋で亡くなってしまった」などの特殊なケースを除き、家族が工事・清掃・消毒にかかった費用を負担する義務が生じる可能性は低いです。実際に負担してくれるかどうかは、大家さんと家族の話し合い次第の部分もあります。

また、仮に自ら命を絶ってしまう形での孤独死だった場合は、明らかに借りていた人に落ち度があるという前提で、大家さんは工事・清掃・消毒にかかった費用を家族に請求することができるでしょう。しかし、家族が家庭裁判所に対して相続放棄の申述を行った場合は、家族が大家さんから請求された費用を支払う義務もなくなります。

また

  • そもそもその人に身寄りがない(相続人が不在である)
  • 身よりはあるので請求したが「お金がない」と言われて払ってもらえない

ことだって考えられるのです。

3.孤独死保険も100%完璧とは限らない

もちろん、損害保険会社・少額短期保険会社もこのような現状を黙って見ている訳ではありません。様々な会社が既に、大家さん(不動産オーナー)用に「孤独死が起きた場合の遺品整理、原状回復費用を負担する」商品として、孤独死保険・特約を用意していますが

  • 遺品整理に関して、業界内で統一された報酬基準が存在しないため、提携している業者を使ったことでトラブルが起きる可能性がある
  • 高齢化社会が進行するに伴い、賃貸住宅内での孤独死が増えることが予想されるため、保険料が値上がりする可能性も高い

など、何かと解決すべき課題が多いのも実情です。つまり「孤独死保険があるから大丈夫でしょ」とは到底言えません。

4.いわゆる「事故物件」扱いされる

大家さんにとって、自分が貸していた部屋で、住んでいた人が誰にも看取られず亡くなってしまうのは、大きな精神的ダメージにつながります。そして、さらに頭を悩ませるのが

次に同じ部屋を借りようとする人が現れた場合、その物件がいわゆる「事故物件」であることを伝えなくてはいけない

という事実です。厳密には心理的瑕疵物件と言って

  • 物件内で人の死に関わる事件・事故が起きた
  • 周辺で事件・事故・火災などがあった
  • 周辺に墓地・宗教団体の施設・指定暴力団の事務所などの嫌悪施設がある

場合、その事実を伝えなくてはいけません。

人によってとらえ方は様々なので一概には言えませんが「実はここの部屋、以前住んでいた方がお亡くなりになって…」と話したとたん「いやいや、それなら止めます」と、借りようとするのを止めることだって十分に考えられるのです。

結果として、なかなか借り手が付かず、家賃も入ってこないという事態が起きてしまいます。

同じ孤独死でも病死なら不要になるかも

ただし、これまでいわゆる「事故物件」については

「事故物件」であること自体は伝える必要はあるものの、具体的な取り扱いに関するルールが取りまとめられていなかった

というのが実情でした。実際に借りようとする人に対しての「事故物件であること」の伝え方は個々の不動産会社や大家さんの判断に委ねられていたため、伝え方がまずかったことによるトラブルも多発していたのです。

国もこの事態を重くみて、2021年5月には指針案を公表し、2021年6月からさらに一般からの意見を募った上で、指針を正式決定する方針です。

参照:国土交通省「宅地建物取引業者による人の死に関する心理的瑕疵の取扱いに関するガイドライン(案)」

大家さんが選ぶべき孤独死保険とは?

結局のところ、人間はいつ死ぬかわからない以上、孤独死も防ぎようがありません。大家さんはこれを心得た上で、いつ何が起きても大丈夫なように、準備を進めておきましょう。そのためには

  • 実際に孤独死が起きた状況を確認した上で正当に保険金を払う
  • 良心的な遺品整理業者と提携している

孤独死保険を選ぶ必要があります。この点についても、もう少し掘り下げて解説しましょう。

1.実際に孤独死が起きた状況を確認した上で正当に保険金を払う

孤独死保険も含め、保険商品には約款が存在します。簡単に言うと「保険会社が保険商品ごとに定めた契約内容、条件などを記載した文書」のことです。保険金の支払いの対象になるトラブル=保険事故が起きた場合、基本的にはこの約款に基づいて、保険会社が保険金の支払いの可否の判断を行います。

しかし、孤独死保険の場合は「約款の情報のみで判断した場合は保険金の支払いの対象にはならないが、現場の状況を確認したら、十分に保険金の支払いの対象になるほどのトラブルだった」という事態が生じえます。

例えば、夏の暑い時期にエアコンがついていない部屋で過ごす羽目になっていた場合、亡くなってから数時間しか経過していなかったとしても、ご遺体が腐り始めてしまい、部屋ににおいが付いてしまうことだって考えられるのです。

そのため、約款に「死亡推定時刻から12時間以上経過してから発見された場合に保険金を支払う」と書いてあった場合、保険会社の対応は

  1. 「約款にはそうやって書いてあるから、支払いの対象とならない」と断る
  2. 「約款にはそうやって書いてあるけど、詳しい状況を調査した上で判断したい」と提案する

のいずれかに大分されます。

できることなら、1)のような紋切り型の対応ではなく、2)の「実際に孤独死が起きた状況を確認した上で正当に保険金を払う」という姿勢を打ち出している孤独死保険を選びましょう。もちろん、必ず保険金が支払われるとは限らない点には注意してください。

2.良心的な遺品整理業者と提携している

また、孤独死保険を選ぶ場合、販売している保険会社がどんな遺品整理業者と提携しているかも重要になります。遺品整理業者の対応品質には、かなりばらつきがあるのも事実です。中には

  • 見積もりの際にせかされて契約したが、いつまで経っても作業を始めない
  • 解約を申し出たら高額なキャンセル料を請求してくる
  • 作業時に予定外の料金を請求され、当初の見積もりからとんでもなくかけ離れた金額を支払う羽目になった
  • 処分しないようにと頼んだ物を勝手に処分する

など、クレームを付けざるを得ない仕事ぶりの遺品整理業者もいます。

自分が頼んだ遺品整理業者がこのような仕事ぶりだった場合は、かなりストレスがたまるはずです。

FPの筆者が「大家さんが選ぶべき孤独死保険」を本気で探してみました

ここまで調べてきて、筆者は「孤独死保険に入っておけばそれでオッケー、というわけでもなさそうだな」と心が折れそうになりました。

しかし、それでも「大家さんが選ぶべき孤独死保険って何だろう?」と必死に調べた結果、こんな保険を見つけたので紹介します。

3ジック少額短期保険「生活安心総合保険2(賃貸住宅生活者総合保険2)」とは?

筆者が白羽の矢を立てたのが、ジック少額短期保険株式会社の「生活安心総合保険2(賃貸住宅生活者総合保険2)」です。

出典:ジック少額短期保険株式会社「生活安心総合保険2(賃貸住宅生活者総合保険2)」ガイドブック

簡単に言うと、孤独死も含め、賃貸住宅に住んでいる際に起こる様々なトラブルをカバーする少額短期保険商品です。

「生活安心総合保険2(賃貸住宅生活者総合保険2)」が大家さんにとってうれしい2つの理由

一見、他の損害保険会社・少額短期保険会社が販売する火災保険とあまり変わらないように思えるかもしれません。しかし、おすすめするからには相当の理由があるのです。

そこで、孤独死対策に頭を悩ませる大家さんにおすすめしたい理由として

  • 遺品整理のスペシャリストがチームに加わって考えた保険だから
  • 合理的な保険料で必要な補償が受けられるから

の2点を解説します。

3-2-1.理由1.遺品整理のスペシャリストがチームに加わって考えた保険だから

「生活安心総合保険2(賃貸住宅生活者総合保険2)」は、遺品整理のスペシャリストがチームに加わった上で開発された商品です。

一般社団法人遺品整理適正化推進協会という団体が、遺品整理のスペシャリストとして携わりました。

出典:一般社団法人 遺品整理適正化推進協会

ボードメンバーでもある遺品整理会社・株式会社Anjoを始め、遺品整理に関する相当な知見および良心的な遺品整理業者とのコネクションを有する団体です。

参照:「生活安心総合保険2取扱代理店」「エンディング費用保険取扱代理店」株式会社Anjo

理由2.合理的な保険料で必要な補償が受けられるから

「生活安心総合保険2(賃貸住宅生活者総合保険2)」は、孤独死だけではなく様々なリスクに備えられる保険です。基本の補償内容として

  • 火災
  • 落雷・破裂・爆発
  • 外部飛来、落下、衝突、倒壊
  • 騒じょう・労働争議など
  • 水漏れ
  • 風災
  • 水災
  • 盗難
  • 偶然な事故による破損、汚損
  • 修理費用
  • 修理費用破汚損担保
  • 罹災費用
  • 緊急宿泊費用
  • 罹災転居費用
  • 残存物撤去費用
  • ドアロック交換費用
  • 孤立死原状回復
  • 遺品整理費用
  • 借家人賠償責任保険
  • 個人賠償責任保険

が含まれています。そして、これだけ補償が受けられて、一人暮らし=単身世帯の場合の保険料は年額8,000円です。

人に家を貸すことで起きるトラブルは「住んでいる人が誰にも知られず亡くなってしまう」ことだけではありません。様々なトラブルが起きることを考えると、合理的な保険料で補償してくれる保険に加入したほうが、はるかに効率が良いはずです。

【結論】「高齢者には貸さない」ではなく「サポートしながら貸す」を目指そう

そろそろまとめに入ります。冒頭でも触れた通り、日本は世界に類を見ないほどの高齢化社会である以上「一人暮らしの高齢者」も今後増えていくはずです。そして、高齢者は

  • 年金や生活保護などでコンスタントにお金が入ってくるので、家賃を払ってもらえないリスクは比較的低い
  • 礼儀正しく親切な人が多いので、周囲の入居者ともめごとも起こしにくい

と、実は「大家さんにとってはありがたいお客様」でもあります。

だからこそ「孤独死されるのが怖いから貸さない」ではなく「万が一のことがあったときに備え、サポートしながら部屋を貸す」方向に考えを切り替えましょう。今回紹介した「生活安心総合保険2(賃貸住宅生活者総合保険2)」がその一助になれば幸いです。

「生活安心総合保険2(賃貸住宅生活者総合保険2)」の販売元、ジック少額短期保険の公式Webページはこちら

一般社団法人 遺品整理適正化推進協会の公式Webページはこちら

「生活安心総合保険2取扱代理店」「エンディング費用保険取扱代理店」株式会社Anjoの公式Webページはこちら

FP 荒井 美亜

FP 荒井 美亜あらい みあ

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大学院まで行って公認会計士を目指していたものの、紆余曲折を経て今は「日本一、お金のことを楽しくわかりやすく説明できるライター兼ファイナンシャルプランナー」目指して活動中です。日本FP協会のイベントのお手伝いもしています。保有資格)日本FP協会認定AFP、FP技能検定2級、税理士会計科目合格、日商簿記検定1級、全経簿記能力検定上級、貸金業務取扱主任者試験合格

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